心理学が好きな犬の備忘録

臨床心理士がサブカルチャーから心理学まで好きなことを書いてゆく

学童の閉鎖的空間の中でー志布志児童クラブの件で思うこと

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2021年4月1日、TwitterYoutubeで児童クラブ内で泣いている女児に対し執拗に自己紹介を強いる動画が拡散され話題となっていました。

 

news.yahoo.co.jp

鹿児島県志布志市太陽の子児童クラブ内で、在籍している高校生がその様子を隠し取りしたそうで、それを拡散したようです。

この叱責する支援員の方の言動は非常によくないものだと思いますが、果たしてこの支援員を叩いて終わる問題なのでしょうか。

私は臨床心理士の資格を持ちながら、学童保育の現場で勤務していたこともありこの件は考えさせられるものがありました。

 

学童保育・児童クラブでの支援員の人員配置の問題というものは感じていました。対して、共働き世帯の増加による学童へのニーズは高まっているということもあり、1人あたりの支援員で多くの児童を見ないといけないといけない現状があります。

このような背景の中で、学童に在籍する児童達は集団生活を送るわけですが子どもたちの中には仕方なく学童に来ている子も一定数いるのが現状です。本当は行きたくないけども、両親が仕事から帰ってくるのが遅く仕方なく学童を利用していたり、狭い敷地の中で様々な制限があり好きなこともなかなかさせてもらえない不満を募らせていたりと様々です。

 

配置される支援員の人数が少ないと、児童に怪我をさせないことなどトラブルを避けることを最優先に考えなければならない中で在籍する子どもたちにとってはさまざまな制限が強いられてしまいます。

また在籍する子どもたちの中には発達障害に起因する感覚の過敏さや苦手さに悩む児童もいて、周囲のざわざわが気になったり、みんなと同じことをすることが嫌で室外へ逃げ出してしまう児童もいます。

 

このような現場を少人数の支援員でまとめるとなると、やはり強い口調で注意し統率するということは割とどこにでもある風景なのかなと思ってしまいます。(まぁそんなことすると反発する子も出てきて悪循環なんですけどね)

集団生活の中で叱ることは大切なことでもあるのですが、タイミングを間違えるとそれは意味を持たなかったり悪影響を及ぼしてしまいます。今回の件にしても、全体の前で話すことが苦手な子だって当然居ますし、そういった苦手さは強要されるべきものではありません。ただ、学童での経験が学校生活の中で活かされ苦手なことができるようになっていくこともありますし対応の仕方次第でしょう。

 

 

こういった現場に必要なことは一人ひとりの児童への対応を丁寧に考えていくことかと思っています。一人ひとりの児童の得意さをしっかりと伸ばしていくためには苦手さとも当然向き合っていく必要があるし、その苦手さの扱いを間違えてしまうと傷つき体験を重ね続けるだけになってしまいます。それは診断の有無は関係なく、全ての子どもたちに当てはまることかと思います。

 

共働き世帯の増加は内閣府男女共同参画白書を参照しても明らかであり、学童保育へのニーズもより高まっているのではないでしょうか。学童は家庭と学校の間に位置する絶妙な空間で、子どもたちにとっても伸び伸びと生活できる場であって欲しい。一方で大人の都合で子どもたちは制限を強いられ、ある意味コントロール下に置かれるような状況を作ってしまう。そこには監視する大人の目も少なく行き過ぎた指導が明るみにならないという問題点が挙げられるでしょう。ただ待機児童を減らすため事業所数を増やすのではなく安定した雇用先として、学童保育に充てる財源の確保も今後強く訴えていく必要性があるように思います。