心理学が好きな犬の備忘録

臨床心理士がサブカルチャーから心理学まで好きなことを書いてゆく

校則は本当に必要なのか?学校と教育について、臨床心理士が考える

 

西郷孝彦『校則をなくした中学校 たったひとつの校長ルール』(小学館)を読み、普段スクールカウンセラーとして学校の中で働きながら思うことを交えて感想と考えていることを書き連ねていこうと思います。

 1.この本はどんな本?

世田谷区立桜丘中学校で10年間校長として子どもたちと向き合った西郷孝彦さん。2020年3月に退任されました。この10年の中で世田谷区立桜丘中学校では何が起こったのかが描かれています。教育や学校の先生はどうあるべきかということを考えることになる一冊です。

非常に読みやすい文章で子育てをする保護者、現場で働く教員、教育に携わる多くの人に読んでもらいたい本でした。

 

 

2.校則を撤廃することについて

桜丘中学校では様々な校則がなく、制服も自由です。そしてスマホの持ち込みが可能でフリーWi-Fiを設置、校長室には充電スペースまであるそうです。授業中に寝ても起こされず、それでいて進学率も高い。

これだけみたら子どもたちにとって理想郷でしょう。しかし、窃盗などが起きた際はすぐに警察に介入してもらうようで校則はなくても社会の1員として自分の中で節度を持って過ごしていかねばなりません。

先生も上から目線で「○○しなさい」というような指導はさせないとのことで、子どもだからといって管理しないというスタンスは素晴らしいなと感じました。

このような桜丘中学校の取り組みは、素晴らしいですが果たして全ての学校で可能なのかということを考えてしまいました。今、教育の現場ではICTの導入で慣れない機材と向き合う必要があったり、多くの現場で発達障害不登校といった大人視点での「問題」に向き合う中で1から新しいことを始め議論するエネルギーなどなく、日々をなんとか過ごしていくことに精一杯な現状があるかと思います。だからこそ、「この本を読め。そして実践しろ」と教育の現場に容易に投げつけることができないのです。

 

「なぜ勉強しないといけないのか」「なぜ受験勉強をしないといけないのか」「なぜ学校に行く必要があるのか」こういった子どもたちの目線での疑問や葛藤には私たち臨床心理士公認心理師スクールカウンセラーとして現場でよく耳にします。子どもたちは様々な疑問を抱きながら勉強をさせられている中で、どうしたら自分から学びたい・学校に行きたいという気持ちになれるのでしょうか。そういった中で、ルールというのは足枷になっている面がやはり大きいとも感じます。でも、社会にでたらルールばかり足枷ばかりでそういった社会の縮図として学校というものがあったなと自分の過去を振り返りながら感じます。ルールの中で、自分の葛藤に折り合いをつけて自分のペースで学校と向き合っていくことは、それはそれで将来生きていく中での同じような状況に遭遇した時の対処方略として、経験が役立つこともきっとあるでしょう。

 

 

3.これからの教育について思うこと

校則や、学校の先生が上から縛るような教育というのはやはり変わっていく必要があるとは思います。教室の中の問題行動をやめさせるために叱るのであればその叱り方を考えていく必要があるでしょう。問題行動については私たち心理シが助言、介入していくことも大切な機会だと思います。

学校での問題は学校だけで解決できないこともあります。家庭と学校の連携も大切なことです。そこにはやはり信頼関係がなければ成り立ちません。信頼関係という点でみたら桜ヶ丘中学校の実践例は素晴らしいものでしょう。

 

家庭での子育てを基本としながら学校の教育はどうあるべきか?議論していかねばならない段階にあると私は思います。現場の先生の負担をいかに軽減していくか?それは時に行政レベルで変わっていかないといけないものもあるでしょう。現場で働く先生たちが豊かな生活を、そしてそこで学ぶ子どもたちが楽しく自由に過ごすために。

 

 

桜ヶ丘中学校を例に、教育に携わる者は今一度、考え動いていく必要がある。そんなことを考えた一冊でした。また、じっくり思うことを書いていきたいと思いますので、読者登録よろしくお願いします!

 

 

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